ゼロから独習する将棋ブックガイド3:いよいよ中級位編
本格的に平手をやっていく
さてようやっとここまできました。長かったですね。場合によってはここまでで、始めてから半年くらい経っているかもしれません。
あらためてロードマップをみておきましょう。
- 本格的に平手をやっていく
満を持して「平手の定跡書」と「詰将棋」の本の紹介に入りたいと思います。
それも終えたころには、みなさんもう5級くらいにはなってるんじゃないでしょうか。ぼくになら勝てると思います。
さらにその先へつなげる準備をしたいかたのために、2冊ほどご紹介したいと思います。
本題の前に:Kindle Unlimitedなら月990円で棋書が無限に読める話
ここまですでに8冊をご紹介しました。ここからまた8冊をご紹介しますが、16冊のうち4冊がKindle Unlimited で読めるようになっています。
4冊を買うとおおよそ5000円弱。これ以外にも相当数の棋書がサブスクで読めます。
16冊中終盤4冊では、そこまで高い割合ではないですし、中でも肝心のものがあまり読めません。しかしこのへんまでくると、「あれも気になるからパラ読みしておきたいな」みたいなのが無限に出てきます。そういうときにかなりお得感のあるサービスといえます。後ほど紹介する『2手詰』など、質の良い詰将棋本がスマホで解けるのもだいぶオイシイ。
「棋書ながめるのも趣味になってきたな」という奇特なかたは、ぜひ検討してみるといいと思います。
平手の定跡書を選ぶ
さて本題です。
前回、駒落ちを3戦法のどれかで突破するための本をご紹介しました。今回はその延長でご紹介します。ついでに攻めっけの強いかたのために、もう1冊あわせて紹介したいと思います。
棒銀:井上慶太『井上慶太の居飛車は棒銀で戦え』
まずはこれ。棒銀ってお互いに居玉でガチンコ殴り合い、守備はどっちらけという印象があるかもしれませんが、実はそんなことはない、攻め潰せるなら攻め潰し、そうでないならしっかり囲う、という呼吸を教えてくれるのが本書です。
相掛かり棒銀、矢倉棒銀、角換わり棒銀ときて、とどめに対振り飛車棒銀と、ひととおり網羅されています。
中飛車:戸辺誠『攻めて強くなる戸辺流中飛車』
はっきり言って名著です。DVDで目から覚えられる、1冊でひととおり対策できる、応用範囲が広い、「次の一手形式」でゆっくり手順を進めてくれるのでたいへんわかりやすい。局面図も豊富で、途中でわからなくなっても復帰しやすい。
しっかり囲ってバッサリ攻める、明快で気持ちのいい将棋が1冊で手に入ります。こんなことがあっていいのか。ヤバい本です。
四間飛車:藤井猛『四間飛車を指しこなす本(1)』
前回も登場した藤井先生の本です。問答無用で名著です。
「次の一手形式」でゆっくり確認ができ、明快に四間飛車が身につくだけでなく、将棋の基本要素が体系的に学べる配慮が随所にちりばめられています。ほとんど寄せきるところまで手順を示してくれているところもあります。
3巻本ですが、とりあえず1巻を読み込めばしばらくは事足ります。四間飛車じたいが優秀なのは間違いないのですが、アマチュアに四間飛車党員が異常に多いのは、藤井先生とこの本の功績が大であると確信しています。
爆発的な火力をあなたに:中川大輔『右四間で攻めつぶす本』
今までとは違う流れからいきなり登場ではありますが、攻め好きにはたまらない1冊もご紹介したいと思います。
「右四間飛車」は矢倉戦法の派生形に分類されるものです。この戦法の特徴は「角道を止めた相手の4四地点に、飛角銀桂を一点集中して最大火力を叩き込む」ことにあります。
初心者の大半は、序盤での角交換をいやがって角道を止めてきます。しかもたいてい矢倉か四間飛車してきます。そのふたつを食いちぎる、天敵ともいえるのがこの右四間です。
きれいに攻めが決まったときの気持ちよさったらありません。病みつきになります。本書は「次の一手形式」なので、やはり読みやすいです。一度お試しあれ。ただし玉は囲いにくいので、注意が必要です。
以上、オススメ定跡書のご紹介でした。個人的には中飛車と四間飛車を勧めます。
詰将棋のステップアップ:村田顕弘『2手詰』
いきなり3手詰はめちゃくちゃ難しい
1手詰はラクに解けるのに3手詰で苦労されているかた、いらっしゃいませんか。はい、わたしのことです。
プロのみなさんはこともなげに「かんたんな3手詰から〜」とか言ってくれますが、慣れないと3手詰はめちゃくちゃ難しいです。検討すべき項目が爆発的に増えるからです。
最初のうちは「検討しなくてもよい選択肢」のアタリもつきません。しかもその上『3手詰ハンドブック』は良問ぞろいです。わかると感動するのですが、そんなものは低級位者の実力では自力ではわかりません。わかるわけねえだろばか!
ということで、このへんてこな本『2手詰』をご紹介します。3手詰の最初の手は既に示されているので、どこに逃げたら相手は最善で、3手目はなにでぴったりかだけ考えればよいようになっています。
ここからなら、だいぶ自力で考える余地が生まれます。こういう問題集は考えることじたいが楽しくないといけません。自分でわかれば楽しみもひとしおというものです。
3手詰に入る前に、ウォームアップとして解いてみましょう。
3手詰デビューするなら:日本将棋連盟『藤井聡太推薦! 将棋が強くなる基本3手詰』
問題が解きやすく、パターン解説が異常に充実
ここまできたので3手詰もご紹介します。オススメはこちら。先ほども出た『3手詰ハンドブック』とくらべて、例題で解き方のパターン解説が網羅されていること、問題が比較的かんたんで解きやすいことが特徴です。とにかく解説が充実していてすごいので、巻頭だけでも読んでみてください。
まず詰将棋は、難しさのあまり投げ出して挫折するのが一番の問題になります。それを「詰将棋の参考書」として整備することで、極力排除しようという努力を感じます。
こっちをひととおり終わらせたら『3手詰ハンドブック』に入るのでもいいと思います。5手詰はまたその後で問題ないと思います。ぼくはまだ5手詰に到達できてません。
さらに上を目指すには
ここまでで、「5級まで上がるためのブックガイド」としては、一応ひとくぎりです。戦法の使用精度を上げ、詰将棋の精度を上げると、自動的に強くなる期間がしばらく続くと思います。
そうはいっても「最後どうしても寄せきれないんだよなー」とか、「攻めてたら逆に攻められて負けるんだよなー」みたいなことがあると思います。そんなあなたにはこちら!
終盤術を染みつけろ:屋敷伸之『屋敷伸之の勝つための終盤感覚』
ここまで、「終盤の寄せ」にかんして、そこまで詳しく説明している本はあげていませんでした。ここであらためてご紹介します。
将棋は終盤が強くないと話になりません。どんなに優勢でも、寄せきれなければあっさり逆転されます。
本書は「詰み」「詰めろ」「必至」「ゼット」といった用語と考え方、攻め/逃げ/受けの判断、囲い別の崩し方、終盤で重要な「速度計算(自分と相手、どちらが早く詰ませられるのか)」について、ごく基本的な形からはじめて応用まで段階的に積み上げてくれます。
途中図もほとんど1手ごとに示してくれるので、迷子になることもありません。慣れたら盤に並べなくても読めるくらいに局面図が豊富です。
しっかり受けることで攻めを活かす:木村一基『木村一基の初級者でもわかる受けの基本』
藤井先生の『攻めの基本戦略』と対になる本です。木村先生といえば「千駄ヶ谷の受け師」の二つ名が有名ですね。
いくら攻めようったって、攻める前に攻められてつぶされては意味がありません。受けて手番をこちらに引き寄せるからこそ、攻めが活きるというもの。
しかし受けの考えはだいぶ難しいので、いちばん最後に回しました。ここから強くなるなら避けて通れませんので、このへんで覚悟を決めて読みましょう。
前回紹介した『攻めの基本戦略』、この『受けの基本』先ほど紹介した『勝つための終盤感覚』は、NHKシリーズのなかでも3冊セットで読むべき本だと思います。
初級者はこの3冊が完全に染みるまで、あれこれ手を出す必要はないと思います。
それではここで、ブックガイドシリーズは区切りとしたいと思います。
ぜんぶで16冊+α、ご紹介しました。戦法をひとつに絞っても14冊は読むことになります。それでもまだ5級。将棋の道、険しすぎない?
とはいえ、ここまででもうほぼ基本は出揃っています。色々と手を出すより、ここまでの本を完全にアタマに入れるほうがよほど大事です。
ひととおり出揃っていることがおわかりいただければ、なんとかしようという気になったりしないでしょうか。
水泳やピアノは完全に独学はそうとう難しいと思います。将棋もそういうところはありますが、本だけでもかなりのところにはいける点で、稀有な存在だとも思います。ぼくもこれから始めるみなさんと一緒に、少しずつ強くなれたらなあと思います。
またもうすこし僕自身が強くなったら、「初段をめざす編」を書くかもしれません。