「定跡を暗記してはいけない」のはなぜなのか
こんにちは。ひとりでも多くのひとに将棋を指してほしいと切に願う今日このごろ、有明堂です。みなさんいかがおすごしですか。
さて、将棋のルールを覚えていちばん最初にぶちあたる問題といえば
「1手目からすでに何したらいいかわかんねーよ」
だと思います。マジでわかんないですよね。
そこで勉強のとっかかりとして「定跡」というのが出てくると思います。
あなたはとりあえず「入門書でもおすすめされてるし、矢倉囲いでも覚えてみようか」と思ったとします。
矢倉の駒組みの一例は、たとえばこんなかんじです。
さてこれを目指して駒組みしていくぞ!とします。
定跡書には、次のように手順が書いてあるはずです。
▲7六歩△8四歩▲6八銀(1図)、△3四歩▲7七銀………
さてここで、あなたはこう思ったとします。
「じゃあこの手順を暗記したら序盤は完璧ってことじゃんね!」
はい、ここに大きな落とし穴があります。
将棋は自分の指し手順だけを暗記するのはかなり危険です。
ちょっとこちらをみてください。3手目まで先手のあなたはまったく同じように指したとします。後手の2手目に注目してください。
▲7六歩△3四歩▲6八銀(2図)。
あれっ。これは……角が……タダで取られる……?
後手は当然△8八角成としてきます(3図)。
あわてて桂を守っても……(4図)
△9九馬と香までタダで取られます(5図)。
角香をタダで取られたら、ここから勝つのはかなり難しいと思います。
まだ6手しか進行してないのに!ひどい!
「なんで!書いてある通りにしたのに!」と思われるかもしれません。
でも将棋ってそういうゲームではないんですね……容赦ないよね……
将棋は相手の動きに必ず対応しなければならないゲームです。
なので、▲7六歩△3四歩となって、ここでどうしても矢倉に組みたいなら▲6六歩と角道を閉じるなど、▲6八銀以外の手を指す必要があります(6図)。
(どちらかというと▲2六歩のほうが自然なのですが、それはまた別のお話。(7図)
なので、定跡はあくまで目指すべき形・組み上がりの形は頭に入れたほうがいいのですが、手順だけを暗記するのは弊害のほうが大きいです。
暗記した手順を再現するのではなく、なるだけ駒どうしの連携・ヒモ付けが切れないように組むことを考えるべきです。
以上、「定跡は暗記しないで臨機応変に組むことが大事だよ」という話でした。
ちなみにこの「角のヒモが切れてタダ取りされる」ミス、慣れてきても無限にやります(ぼくもついこのあいだやりました……)。角とのヒモ付けを切らさない。これはぜひアタマに入れてくださいね!