ネットにあるもので将棋を始めてみる
みなさんおまちかね(?)、雑に将棋をはじめてみよう!のコーナーです!どんどんぱふぱふ!
以前ブログで全3回で独学におすすめの棋書を、ひととおりご紹介させていただきました。
しかしですね、これ、真面目にやるのはだいぶダルいですね!
ということで、ネットにあって、動画で観れて、なるべく無料で、しゃしゃっと始めてみようというのが今回の記事になります。そこからもっと知りたいことが増えたな〜とか、まとまった形でトレーニングしたいな〜となったら、本を買ってみるといいかもしれませんね。
ルールと駒の動きを覚える
将棋ウォーズの初心者講座で動画を観る
まずは第一歩。動画でルールから覚えちゃいましょう。
動画に出演されている、女流棋士の山口恵梨子女流二段は普及活動のスペシャリストで、YouTubeチャンネルの動画がどれもわかりやすく、最初に観るにはだいぶおすすめです。
将棋ってなに?から実際に対局してみよう!というところまで動画で丁寧に観られます。
戦法を知る
四間飛車を指してみる
将棋には序中終盤というものがおおまかにあります。
序盤は自陣の整備。攻めと守りのエリアを構築します。
お互いの駒がぶつかりあったら中盤。相手よりも駒得したり、敵陣を突破して相手玉に迫ることが主になります。
終盤は相手が自分を詰ますよりも早く、相手玉を詰ますことが目的になります。
ここで最初に大事になるのが序盤と終盤です。どうやって自陣を整備したらいいか知らないと初手から途方に暮れるし、どうやって王様を詰ますのか知らないとそもそもゲームが終わりません。
中盤は戦法の狙いごとに自動的にやることが決まる面と、果てしなく難しいという面の両方がありますので、ここではしばらく考えなくて大丈夫です!(放棄)
では戦法をひとつ知っていこう!ということでさっそくやっていきましょう。
またしても山口恵梨子先生の動画から。
始めるならまずは棒銀じゃないの?と思わんではないのですが、攻めと守りのエリアを分けて、王を安全にしてから戦うのが、なんやかんや強いです。
ということでとりあえず四間飛車で指してみましょう!性に合わないようなら、棒銀の動画も山口先生があげてるので観てみてください。
最終的な勝ちの形を知る
詰将棋の基本をみておこう
詰みの形といえば詰将棋。ということでこれも動画でみてしまいましょう。
とりあえず山口先生の動画観ておけばオッケー!ありがとう山口せんせい!
はい、ここまで観たら最低限はオーケーです。もっと丁寧にやりたい!とか詳しく知りたい!というなら、山口先生のほかの動画を観るのもいいし、「いつつ将棋教室」さんの動画を観るのもおすすめです。めっちゃ丁寧です。『はじめての将棋手引帖』シリーズを1巻からみていくと、ひととおりのことがわかると思います。
山口先生の動画には、初心者のお天気お姉さんに将棋を覚えてもらう企画とかもあるので、観るとかんじがつかめます。
トレーニングする
1手詰をたくさん解こう
まず最初にトレーニングするなら、やっぱり1手詰がおすすめです。
各駒の動かし方や特性を身体に染み込ませるには、これが効率めちゃくちゃいいんですね。
ということで『みんなの詰将棋』をどうぞ。
これの「入門者むけ」の300問をばーっとやってみてください。それだけでウォーズ6級くらいまで余裕でいけます。
スポーツでいうところの走り込みみたいなトレーニングなのでだいぶツライんですけど、やれば確実に成果が出ます。
課金してやってもいいよ!というかたはぜひ『駒サプリ』を。月額550円で無限に良問が解きまくれます。
対局してみる
まずはAI相手に肩慣らし
そいじゃあ実際に対局してみましょう!おすすめアプリはやっぱり『ぴよ将棋』!
駒落ちから平手までなんでもござれ、お手軽に棋譜解析ができて高機能。DLしない理由がないです。
オンライン対戦したくなったら
対人戦もやってみたいよ!となったらこちら、将棋ウォーズ。
いきなりオンラインでやってもけっこう楽しめます。無料で1日3局まで対戦が可能。
最初は内部レーティングが3級くらいに設定されているので、10局くらいはめちゃくちゃ格上の相手とマッチングして負けまくるかもしれません。しばらくすると同じくらいの相手と安定して当たるようになります。
持ち時間が最大でもひとり10分なのであっというまに時間がなくなりますが、相手も同じなので、お互いにめちゃくちゃ間違えます。間違えてなんぼという気持ちでやるといいと思います。
対局したらふり返る
強くなるには対局のどこが悪かったかふり返ることがだいぶ重要です。
ぴよ将棋なら対局後そのまま解析するか聞かれます。ぜひ解析してみてください。
ウォーズの対局もぴよ将棋に読み込んで解析できます。
ということでひととおりご紹介しました。将棋は入門の入り口がいちばんツライんですけど、慣れるほどに楽しくなるので!みんなカジュアルに始めてみてください!
「定跡を暗記してはいけない」のはなぜなのか
こんにちは。ひとりでも多くのひとに将棋を指してほしいと切に願う今日このごろ、有明堂です。みなさんいかがおすごしですか。
さて、将棋のルールを覚えていちばん最初にぶちあたる問題といえば
「1手目からすでに何したらいいかわかんねーよ」
だと思います。マジでわかんないですよね。
そこで勉強のとっかかりとして「定跡」というのが出てくると思います。
あなたはとりあえず「入門書でもおすすめされてるし、矢倉囲いでも覚えてみようか」と思ったとします。
矢倉の駒組みの一例は、たとえばこんなかんじです。
さてこれを目指して駒組みしていくぞ!とします。
定跡書には、次のように手順が書いてあるはずです。
▲7六歩△8四歩▲6八銀(1図)、△3四歩▲7七銀………
さてここで、あなたはこう思ったとします。
「じゃあこの手順を暗記したら序盤は完璧ってことじゃんね!」
はい、ここに大きな落とし穴があります。
将棋は自分の指し手順だけを暗記するのはかなり危険です。
ちょっとこちらをみてください。3手目まで先手のあなたはまったく同じように指したとします。後手の2手目に注目してください。
▲7六歩△3四歩▲6八銀(2図)。
あれっ。これは……角が……タダで取られる……?
後手は当然△8八角成としてきます(3図)。
あわてて桂を守っても……(4図)
△9九馬と香までタダで取られます(5図)。
角香をタダで取られたら、ここから勝つのはかなり難しいと思います。
まだ6手しか進行してないのに!ひどい!
「なんで!書いてある通りにしたのに!」と思われるかもしれません。
でも将棋ってそういうゲームではないんですね……容赦ないよね……
将棋は相手の動きに必ず対応しなければならないゲームです。
なので、▲7六歩△3四歩となって、ここでどうしても矢倉に組みたいなら▲6六歩と角道を閉じるなど、▲6八銀以外の手を指す必要があります(6図)。
(どちらかというと▲2六歩のほうが自然なのですが、それはまた別のお話。(7図)
なので、定跡はあくまで目指すべき形・組み上がりの形は頭に入れたほうがいいのですが、手順だけを暗記するのは弊害のほうが大きいです。
暗記した手順を再現するのではなく、なるだけ駒どうしの連携・ヒモ付けが切れないように組むことを考えるべきです。
以上、「定跡は暗記しないで臨機応変に組むことが大事だよ」という話でした。
ちなみにこの「角のヒモが切れてタダ取りされる」ミス、慣れてきても無限にやります(ぼくもついこのあいだやりました……)。角とのヒモ付けを切らさない。これはぜひアタマに入れてくださいね!
将棋をはじめるとき、しておくといいかんじな心の準備
将棋をはじめてみようとするとき、意識しておくといいことがいくつかあります。
これはプロ棋士の遠山先生もおっしゃっていることです。
書いたら長くなってしまったので、「雑に始めるんじゃなかったのか?」というかたは見出しだけ読んで、あとは飛ばして本編のほうを読んでみてくださいね。
いきなり経験者と指さない
将棋は水泳のトレーニングにかなり似ています。
将棋で「ルールと駒の動きを覚えた」という段階は、「プールに顔をつけられる」くらいなもんです。
それなのに経験者といきなりやろうとすると、「やっぱクロールくらいやってみせないといけないよな」とか力んで無理してしまうことになります。そうするとどうなるか。当然、溺れます。まだバタ足も覚えてないのに!クロールなんかできるわけないの!
そうなったらもう心が折れて、もう二度とプールになんか行かない=将棋は二度としない、となってしまいます。それはぜひ避けていただきたい。
アプリ「ぴよ将棋」で段階的に慣れる
そこでまずは、アプリに相手になってもらいましょう。オススメは「ぴよ将棋」です。
色んな強さのひとを集めるのはものすごくたいへんですが、アプリならボタンひとつでかんたん。自分より弱いアプリをぶっつぶして、まずは自信をつけましょう。
弱すぎるなと感じたら、少しずつレベルを上げて手強くしていきましょう。
最初から「うまく指そう」としない
アプリ相手になら何回「待った」をかけてもいい、と考える
アプリ相手なら気兼ねがいりません。まずい手を指してもばんばん「待った」したりして、良い手を探ったりできます。
考え込んで「最善の手を指さねば…」と思い悩むくらいなら、バンバン試してバンバン巻き戻しましょう。
負け慣れる。負けから学ぶ
将棋はフロムソフトウェアのゲームにも似ています。『ダークソウル』とかそういうやつ。つまり「死に覚えゲー」だということです。何度も何度もコンティニューしていくうちに、紙一重で突破できるようになっています。
そのうえ将棋は必ず勝敗が決まります。つまり、単純に割れば半分は負けることになります。
ついでに言えば、よほどでないと圧倒的な差をつけられて負けるということはないです。
だいたいはあと1手差でどちらかの玉が詰む、というスピード勝負になります。押せ押せで攻めてもギリギリの逆転負けをすることもしょっちゅうです。
となると負けから学ばないとめちゃくちゃ損です。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というやつですね。負け慣れてくると、いっそ爽やかな気持ちになったり、相手の上手さに感心したり、素直に吸収したりできるようになります。
できれば一緒に始める初心者の友達が捕まえられるとよい
実際に指す相手がいると、だんぜんモチベーションが維持できる
そうはいっても将棋は対人で指すのがいちばん楽しいものです。アプリだけではモチベーションの維持はすごく難しい。オンライン対戦もなんとなく気がひけたりするでしょう。そういうときは一緒に始められそうなひとを捕まえましょう。一緒にやれば長く続けられるというものです。月に一度くらい対局できると、かなり違います。
ぼくは幸運にも、一緒に始める友人を同時にふたりも確保できたのが大きかったです。友人の確保、これがどんなトレーニングよりも難しいかもしれませんが、できそうなら頑張ってみてください。
ゼロから独習する将棋ブックガイド3:いよいよ中級位編
本格的に平手をやっていく
さてようやっとここまできました。長かったですね。場合によってはここまでで、始めてから半年くらい経っているかもしれません。
あらためてロードマップをみておきましょう。
- 本格的に平手をやっていく
満を持して「平手の定跡書」と「詰将棋」の本の紹介に入りたいと思います。
それも終えたころには、みなさんもう5級くらいにはなってるんじゃないでしょうか。ぼくになら勝てると思います。
さらにその先へつなげる準備をしたいかたのために、2冊ほどご紹介したいと思います。
本題の前に:Kindle Unlimitedなら月990円で棋書が無限に読める話
ここまですでに8冊をご紹介しました。ここからまた8冊をご紹介しますが、16冊のうち4冊がKindle Unlimited で読めるようになっています。
4冊を買うとおおよそ5000円弱。これ以外にも相当数の棋書がサブスクで読めます。
16冊中終盤4冊では、そこまで高い割合ではないですし、中でも肝心のものがあまり読めません。しかしこのへんまでくると、「あれも気になるからパラ読みしておきたいな」みたいなのが無限に出てきます。そういうときにかなりお得感のあるサービスといえます。後ほど紹介する『2手詰』など、質の良い詰将棋本がスマホで解けるのもだいぶオイシイ。
「棋書ながめるのも趣味になってきたな」という奇特なかたは、ぜひ検討してみるといいと思います。
平手の定跡書を選ぶ
さて本題です。
前回、駒落ちを3戦法のどれかで突破するための本をご紹介しました。今回はその延長でご紹介します。ついでに攻めっけの強いかたのために、もう1冊あわせて紹介したいと思います。
棒銀:井上慶太『井上慶太の居飛車は棒銀で戦え』
まずはこれ。棒銀ってお互いに居玉でガチンコ殴り合い、守備はどっちらけという印象があるかもしれませんが、実はそんなことはない、攻め潰せるなら攻め潰し、そうでないならしっかり囲う、という呼吸を教えてくれるのが本書です。
相掛かり棒銀、矢倉棒銀、角換わり棒銀ときて、とどめに対振り飛車棒銀と、ひととおり網羅されています。
中飛車:戸辺誠『攻めて強くなる戸辺流中飛車』
はっきり言って名著です。DVDで目から覚えられる、1冊でひととおり対策できる、応用範囲が広い、「次の一手形式」でゆっくり手順を進めてくれるのでたいへんわかりやすい。局面図も豊富で、途中でわからなくなっても復帰しやすい。
しっかり囲ってバッサリ攻める、明快で気持ちのいい将棋が1冊で手に入ります。こんなことがあっていいのか。ヤバい本です。
四間飛車:藤井猛『四間飛車を指しこなす本(1)』
前回も登場した藤井先生の本です。問答無用で名著です。
「次の一手形式」でゆっくり確認ができ、明快に四間飛車が身につくだけでなく、将棋の基本要素が体系的に学べる配慮が随所にちりばめられています。ほとんど寄せきるところまで手順を示してくれているところもあります。
3巻本ですが、とりあえず1巻を読み込めばしばらくは事足ります。四間飛車じたいが優秀なのは間違いないのですが、アマチュアに四間飛車党員が異常に多いのは、藤井先生とこの本の功績が大であると確信しています。
爆発的な火力をあなたに:中川大輔『右四間で攻めつぶす本』
今までとは違う流れからいきなり登場ではありますが、攻め好きにはたまらない1冊もご紹介したいと思います。
「右四間飛車」は矢倉戦法の派生形に分類されるものです。この戦法の特徴は「角道を止めた相手の4四地点に、飛角銀桂を一点集中して最大火力を叩き込む」ことにあります。
初心者の大半は、序盤での角交換をいやがって角道を止めてきます。しかもたいてい矢倉か四間飛車してきます。そのふたつを食いちぎる、天敵ともいえるのがこの右四間です。
きれいに攻めが決まったときの気持ちよさったらありません。病みつきになります。本書は「次の一手形式」なので、やはり読みやすいです。一度お試しあれ。ただし玉は囲いにくいので、注意が必要です。
以上、オススメ定跡書のご紹介でした。個人的には中飛車と四間飛車を勧めます。
詰将棋のステップアップ:村田顕弘『2手詰』
いきなり3手詰はめちゃくちゃ難しい
1手詰はラクに解けるのに3手詰で苦労されているかた、いらっしゃいませんか。はい、わたしのことです。
プロのみなさんはこともなげに「かんたんな3手詰から〜」とか言ってくれますが、慣れないと3手詰はめちゃくちゃ難しいです。検討すべき項目が爆発的に増えるからです。
最初のうちは「検討しなくてもよい選択肢」のアタリもつきません。しかもその上『3手詰ハンドブック』は良問ぞろいです。わかると感動するのですが、そんなものは低級位者の実力では自力ではわかりません。わかるわけねえだろばか!
ということで、このへんてこな本『2手詰』をご紹介します。3手詰の最初の手は既に示されているので、どこに逃げたら相手は最善で、3手目はなにでぴったりかだけ考えればよいようになっています。
ここからなら、だいぶ自力で考える余地が生まれます。こういう問題集は考えることじたいが楽しくないといけません。自分でわかれば楽しみもひとしおというものです。
3手詰に入る前に、ウォームアップとして解いてみましょう。
3手詰デビューするなら:日本将棋連盟『藤井聡太推薦! 将棋が強くなる基本3手詰』
問題が解きやすく、パターン解説が異常に充実
ここまできたので3手詰もご紹介します。オススメはこちら。先ほども出た『3手詰ハンドブック』とくらべて、例題で解き方のパターン解説が網羅されていること、問題が比較的かんたんで解きやすいことが特徴です。とにかく解説が充実していてすごいので、巻頭だけでも読んでみてください。
まず詰将棋は、難しさのあまり投げ出して挫折するのが一番の問題になります。それを「詰将棋の参考書」として整備することで、極力排除しようという努力を感じます。
こっちをひととおり終わらせたら『3手詰ハンドブック』に入るのでもいいと思います。5手詰はまたその後で問題ないと思います。ぼくはまだ5手詰に到達できてません。
さらに上を目指すには
ここまでで、「5級まで上がるためのブックガイド」としては、一応ひとくぎりです。戦法の使用精度を上げ、詰将棋の精度を上げると、自動的に強くなる期間がしばらく続くと思います。
そうはいっても「最後どうしても寄せきれないんだよなー」とか、「攻めてたら逆に攻められて負けるんだよなー」みたいなことがあると思います。そんなあなたにはこちら!
終盤術を染みつけろ:屋敷伸之『屋敷伸之の勝つための終盤感覚』
ここまで、「終盤の寄せ」にかんして、そこまで詳しく説明している本はあげていませんでした。ここであらためてご紹介します。
将棋は終盤が強くないと話になりません。どんなに優勢でも、寄せきれなければあっさり逆転されます。
本書は「詰み」「詰めろ」「必至」「ゼット」といった用語と考え方、攻め/逃げ/受けの判断、囲い別の崩し方、終盤で重要な「速度計算(自分と相手、どちらが早く詰ませられるのか)」について、ごく基本的な形からはじめて応用まで段階的に積み上げてくれます。
途中図もほとんど1手ごとに示してくれるので、迷子になることもありません。慣れたら盤に並べなくても読めるくらいに局面図が豊富です。
しっかり受けることで攻めを活かす:木村一基『木村一基の初級者でもわかる受けの基本』
藤井先生の『攻めの基本戦略』と対になる本です。木村先生といえば「千駄ヶ谷の受け師」の二つ名が有名ですね。
いくら攻めようったって、攻める前に攻められてつぶされては意味がありません。受けて手番をこちらに引き寄せるからこそ、攻めが活きるというもの。
しかし受けの考えはだいぶ難しいので、いちばん最後に回しました。ここから強くなるなら避けて通れませんので、このへんで覚悟を決めて読みましょう。
前回紹介した『攻めの基本戦略』、この『受けの基本』先ほど紹介した『勝つための終盤感覚』は、NHKシリーズのなかでも3冊セットで読むべき本だと思います。
初級者はこの3冊が完全に染みるまで、あれこれ手を出す必要はないと思います。
それではここで、ブックガイドシリーズは区切りとしたいと思います。
ぜんぶで16冊+α、ご紹介しました。戦法をひとつに絞っても14冊は読むことになります。それでもまだ5級。将棋の道、険しすぎない?
とはいえ、ここまででもうほぼ基本は出揃っています。色々と手を出すより、ここまでの本を完全にアタマに入れるほうがよほど大事です。
ひととおり出揃っていることがおわかりいただければ、なんとかしようという気になったりしないでしょうか。
水泳やピアノは完全に独学はそうとう難しいと思います。将棋もそういうところはありますが、本だけでもかなりのところにはいける点で、稀有な存在だとも思います。ぼくもこれから始めるみなさんと一緒に、少しずつ強くなれたらなあと思います。
またもうすこし僕自身が強くなったら、「初段をめざす編」を書くかもしれません。
ゼロから独習する将棋ブックガイド2:初級者からステップアップ編
次は7級をめざす
- 次は7級をめざす
- 6〜2枚落ち:そろそろ戦法を身につけてみよう
- 攻めの考え方をもうすこし詳しく知る:藤井猛『藤井猛の攻めの基本戦略』
- 1手詰を解く:日本将棋連盟『藤井聡太推薦! 将棋が強くなる実戦1手詰』
ネットで調べたかぎりでは、前回までの内容をひととおりこなすと、だいたい9級くらいと思ってよいみたいです。
ぼくたちの目標は「独学で5級をめざす」でした。
5級のめやすは「ひとつの戦法を使うことができて、3手詰が解ける」というところのようです。「解けるってどのくらいだ」と言われると難しいですが、ぼくのかんじからいうと「問題をみて、うーんとひとしきり考えて、簡単なものなら30秒くらいで解ける」あたりでしょうか。3手詰のむずかしいやつはマジで難しいので……
ということで、まずは7級くらいまで押し上げる4冊をご紹介します。
ここでの目標は3つです。
・戦法を決めて駒落ちを戦えるようになる。
・攻めの考え方をさらに詳しく身につける。
・1手詰が解けるようになる。
あらためてロードマップをみておきましょう。
6〜2枚落ち:そろそろ戦法を身につけてみよう
8枚落ちから6枚になると、突然難しさがはねあがります。
まず上手(ハンデをつけているほう)の防御力が段違いに上がり、陣形を突破することそのものが難しくなります。
必然、上手陣を突破するためには駒の交換をしなければならない場面が増えます。
そうすると上手が手にした駒で攻撃してくることもしょっちゅうです。
となると、下手も「玉を守りながら攻める」ことを意識する必要が出てきます。
ここらでどの戦法を使うかひとつ決めて、それに従って「数の攻め」と「囲って守る」ことを覚えていきましょう。いくつかオススメの戦法を紹介するので、性に合いそうなものを選んでみてください。遠山先生の本でいうと5章以降のあたりを、それぞれの戦法に置きかえて読んでみてください。
守りを後回しにして攻めまくる:棒銀
棒銀、とくに「原始棒銀」にはあらゆる戦法の基本が詰まっていると言われています。
ぼくは後述する中飛車を愛用していますが、たしかに中飛車の攻め方も棒銀とかなり似ていると感じます。銀を繰り出し、飛車と連携させることは将棋の基礎中の基礎だからです。
「基本」を侮ってはいけません。じっさい棒銀はめちゃ強いのです。受ける側はちょっと間違えば秒速で潰されます。
そのかわり、守りに割くはずの手数を攻撃にまわしているという一面もあります。攻めに失敗するといっぺんに崩される危険といつも隣り合わせだと思っておきましょう。
速攻で攻撃してからキリのいいところで矢倉に囲う、玉をさっさと逃がす、などアタマの切り替えが要求されます。
堅守速攻、しっかり囲いながらも積極的に攻める:中飛車
もうすこし攻撃と守備のバランスを重視しているのが中飛車です。これまたシンプルに破壊力が高い。しかも(片)美濃囲いが早く囲えて堅い。プロの手を真似しやすい。棒銀とともに、使って非常に楽しい戦法です。
攻めどころで角などの大駒を犠牲にする大技を繰り出せたりする反面、時機を間違うとそのままカウンターを決められる危うさもあります。
ツノ銀中飛車という形をとれば、相手の攻めを誘発しカウンターを狙う陣形とすることもできます。
バランスのよい形で着実に攻める:四間飛車
アマチュア一番人気。それもそのはず、異常に使いやすいのです。基本陣形のバランスがよく、相手の攻めをいなしてカウンターを決めるスタイルもとれるし、積極的に攻撃するスタイルもとれる。相手を選ばず組むことができる。プロの積み上げも膨大なので、質の高い定跡書も豊富。そして本美濃囲いがかんたんに組めるのに堅い。ヤバい。
地に足のついた将棋を指したいなら、四間飛車が間違いありません。
なんでこの3つなの?
理由は以下になります。
相手と状況を(おおよそ)選ばず使える=勉強をコンパクトにできる
とにかくこれに尽きます。居飛車のほかの戦法は相手に合わせて手を変える必要がありすぎます。だからこそ奥深く楽しいともいえるのですが、時間のない大人、しかも入門したてのアマチュアがカッコつけてもいいことはありません。
バタフライ泳法がやりたいなら、まず背泳ぎと平泳ぎ。それからクロール。物事には順序があります。
さらにいえば、将棋はバタフライに平泳ぎが勝ったりします(もちろん比喩表現です)。やりやすい戦法で楽しく指す。これ以上の上達法はないと思います。
良書が多いので参考にしやすい
これもかなり大きいです。たとえば振り飛車でも三間飛車は現代将棋で大きく注目を浴びている戦法ですが、まだまだ整理が行われている最中で、初心者に読みやすい定跡書を探すのはたいへんです。先後で考え方がだいぶ変わる戦法でもあります(後手で石田流三間飛車するのはだいぶ苦しい、など)。
その点、紹介した3戦法は良書の充実すること甚だしいので安心です。やはり良いガイドがあることがいちばん。
やりたい戦法がすでにあるなら、それでもいい
とはいえ、これはあくまで「オススメ」であって、絶対でもなんでもありません。フォロワーさんには「水曜どうでしょうのうれしー(嬉野D)が好きだから」という理由で最初の戦法を嬉野流にしたというかたがいます。友人には、誰にでもなんでも矢倉で挑むというやつがいます。これがまー強い。
好きこそもののなんとやら、こだわりで選ぶのは悪いことではありません。
棒銀と中飛車を選ぶなら:高橋道雄『棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!』
攻めて楽しもう!という御仁にはこちら。
しかも攻めるだけじゃない。棒銀と中飛車であっても、しっかり囲って守ることまで勉強できるすぐれもの。
四間飛車を選ぶなら:高橋道雄『駒落ち新定跡』
四間飛車らしい重厚さでじっくり攻める方法が学べます。こちらは矢倉と三間飛車穴熊も同時収録。お買い得ですよ。
なんでいわゆる「駒落ち定跡」をオススメしないの?
戦法も身について一石二鳥
今回はあくまで「戦法を身につける一貫」として駒落ちをやっていこうというのがコンセプトです。
さらにいうと、駒落ち専用の定跡は「その手合を最速・最高効率で攻略する」ためのもので、それじたいはめちゃ勉強になるんですが、ホントの初心者ではその良さを拾いきれないというか、やっぱりある程度わかってきてから、高段者と指すさいにようやくありがたみがわかるたぐいのものに思うんですね。
駒落ち攻略としてはすこしくらい迂遠でも、「まず戦法を明示して、さらに囲って、その戦法で崩す」という感覚を掴んでおくのは良いことのように思います。
寄せまでしっかり示してくれる
それだけじゃないんです。この2冊、ふつうの定跡書では「下手勝勢」で放り出されるところよりちゃんと先に進めて、完全に詰みというところまで手順を示してくれます。
まったく同じ局面になることはないにしても、詰みまでの方針がわかるのは初級者にとってはありがたいことです。
さらに覚えたことが平手にも応用できる。こんなにうれしいことはない!
ということで、この2冊から学ぶのがいいと思う理由でした。
これでいくという戦法をひとつ選んだら、どちらか1冊、その戦法の章だけ読んでみましょう。
攻めの考え方をもうすこし詳しく知る:藤井猛『藤井猛の攻めの基本戦略』
「将棋は守備駒のほうが多いゲーム」
「攻めは飛角銀桂」
「銀の隣の筋を突く」
「攻め駒を駒台に置くのは得、守備駒は損」
「相手の駒を自戦力にする」
「戦力は一点集中し、数で勝る」
「執拗に噛み付く」
「動けない駒を狙う」
「世の定跡は上の組み合わせ、とくに動けない駒を狙うように組み立てられている」
といった、攻めるときに有効な考え方を簡単な実例から応用例まで、1冊でステップを踏んで学べます。
これがわかりやすいのに内容の異様に濃い一冊で、今までぼんやりと「そうだろうなー」と感じていたものがシャープに具体的にわかるようになります。藤井先生はすごいんだぞ。
これはぜひ3周してほしい本です。なんか違うなと思ったら、ここに立ち戻るとたくさんの発見があります。
1手詰を解く:日本将棋連盟『藤井聡太推薦! 将棋が強くなる実戦1手詰』
戦法・考え方・ときて最後に問題集です。ついに今回は1手詰!
なんで詰将棋なの?
詰将棋、だるいですよね。基礎練習が大事といわれれば言われるほどやりたくない。
「解けない」ということで突きつけられる、実力が足りないという事実。でもじっさい効くからしょうがないんです。
1手詰のメリットはなんといっても「駒の動き、利きを身体に染み込ませることができる」という点です。考えなくても息をするように駒を使うことができるようになること。これが大事です。
そのほかの効能については、以下のブログを読んでみるといいかもしれません。説得されましょう。
なんで『ハンドブックシリーズ』じゃないの?
詰将棋といえば『ハンドブックシリーズ』が有名で、実際たいへんためになります。ぼくもお世話になっています。解説も丁寧だし、実戦に応用が利くし、構成もすぐれています。
しかしこの『実戦1手詰』、というか5手詰までの「実戦・基本・明解」のセットシリーズが「詰将棋の考え方の参考書」として異常に丁寧、というところを評価したいと思います。
異常に丁寧で充実した前置きと例題、解きやすい難易度
詰将棋ってなにを考えて解いたらいいの?ということがたいへんわかりやすくまとめてあり、続く問題の難易度も『ハンドブックシリーズ』に比べれば簡単です。「こうすれば解ける」がすぐ身について、「じぶんで考えて解く」楽しみがある。解けることで自信にも繋がります。
ざかざか解いて次へとつなげましょう。
以上、ご紹介した3冊をひととおりこなして、平手に進みましょう。もしかしたらもう「ぴよ将棋」の15級あたりになら、平手楽勝で勝てるようになっているかもしれませんね。
次回はいよいよ平手ベースの勉強に移行していきます。そろそろ5級が視野に入ってきましたね。
カジュアルに独習するための棋書を読むコツ
今回はちょっと番外編。棋書・参考書を、カジュアルになるべく挫折せず読むコツをご紹介します。
読むのがダルいかたは、目次の見出しだけ目を通していただければじゅうぶんです。
棋書を読むコツ:4つの「ない」と1+3回読み
4つの「ない」
さて以下に提案するコツは、ひとことでいえば「がんばらない」「雑に読む」ということです。もっと正確にいえば、「がんばるところを間違えない」ということです。
ゆるゆるカジュアルに、力を抜いて身につけるには以下の「4ない」を守るといいと思います。
① 覚えようとしない。
どうせ忘れるんだから最初から「覚えよう!」なんて意気込んではいけません。そんな気持ちでゆっくり読むくらいなら、雑に3周したほうが絶対に定着率がいいです。雑に読みましょう。
② 最初から自分で解こうとしない。
将棋をはじめるときに大事なことがひとつだけあります。
「自分の実力を過信しない」
これだけです。初心者はまず解けないし読めません。ぼくがそうだったのだから間違いないですよ!「いうて解けるやろ」は通用しない!非情なもんだ!
「下手の考え休むに似たり」。基礎体力のないものがいくらないアタマをふったって何も出てきません。まず1回ざっと眺めて、「へー、そうなんだ」と感心してみるところから始めましょう。3周したら勝手に「あー、これはわかるわ」となっています。もう一度申し上げます。雑にやりましょう。
詰将棋や「次の一手」問題なども同様です。30秒だけ眺めます。解けそうなら解いてしまってください。解けそうにないなら、ぼんやりと「こうかな?」とだけアタリをつけましょう。完全に読む必要はありません。そしたら回答解説を読みます。これを繰り返します。
③ 1回で完全に読もうとしない。
言いたいこととしては①②と同じです。あらためて言いたいことは「雑にやれ、そのかわり3回やれ」です。最初から丁寧にノートとろうとかしてませんか!?そんなのは3周目にやればいいんですよ!大枠・概要をまず掴む!それから詳細を掴む!この順番ですよ!逆にしないで!
④ 1回で通読しようとしない。
とりあえず1章だけ読んで、ほかの本を1章読んで、実践を指してみて、戻ってきたらおさらいにもう一度読んでもいいし、先を読んでもいい。これくらいでやるのがいいと思います。
棋書・参考書は1冊の情報量がとんでもなく多いです。無理して通読しようとする必要はありません。気安い量だけ読みましょう。
そのかわり:1冊は1+3回は目を通す
おおかたお話しましたが、棋書の読みかたをあらためてまとめると以下のようになります。
0回目:内容を読まずに見出しだけ読む。最後までページだけめくる
全体の構成をまずみましょう。そうするとなんでここでこの話をしてるのか?が掴みやすくなります。ミステリを読むのではないので、バンバンとネタバレをくらったほうが楽になります。
見出しには結論が書いてあることも多いです。答えだけ先に知ってしまえばおトクですね。
1回目:大枠だけを掴むようにひととおり内容を読む
掴んだ大枠を補強するように本文を読みましょう。細かいことはどうせ忘れるんだから気にしてはいけません。棋譜・手順はなるべく丁寧に並べながら読んだほうがいいとは思いますが、慣れるほうが先なので気にしなくてもいいです。
局面図を眺めるだけでも効果があります。
2回目: もう一度通読し、「そういえばこんなこと書いてあったなあ」を確認する
2度目なら棋譜を並べるのもわりと楽になっているはずです。このへんで本格的に手順を確かめましょう。
3回目:自分でどれだけわかるか、やりながら読んでみる。ノートをつけるならこのあたりで。
おさらい編です。そろそろ頭にも定着しやすい頃合いです。ノートをとるなら今。
以上、参考書を読むときのコツでした。とにかく「方針を大掴みにとらえる」ことが大事です。細かいことは後に回しましょう。そのかわり、何度もやる。そうすると「細かいこと」は後からついてきます。雑でいいので、3回。僕と約束してくださいね。
ゼロから独習する将棋ブックガイド1:入門から初級へ上がろう編
将棋に入門するための良書は山ほど出版されています。
初段にあがるための勉強法も山ほど紹介されています。
「読んでよかった、ためになった棋書」を紹介するブログ記事も山ほどあり、たいていどれもよい記事です。
でもなぜか、「入門してから初級まで、初級から戦法をひとつ決めて身につけるくらい(5級くらい)まで、何をどういう順番で実践してみたらいいか」を紹介するものは、それほど多くありません。
そんななかでもいい本はあります。遠山先生の『ゼロからはじめる 大人のための将棋入門』なんかがそうです。なんとワンコイン。ちょっと(だいぶ)図版が小さいことが玉に瑕。
「とりあえずの入門がすんでから5級へ」なら、こちらもいい本です。
しかし。「読む順」まで示したブックガイドとなるとぜんぜんない。まったくないんですね。
「入門」と「初段」のあいだ、「初級から級位のまんなかへ」が果てしなく長いのに、なにしたらいいのかぜんぜんわからない。
いやー、もっとあっていいと思うんですよ。
こどもなら繰り返し失敗しながら覚えていけば、気がついたら5級くらいは指せるようになっているでしょう。しかし大人がゼロからとなると、なるべく効率のいいやりかたをしたいものです。
ということで、へっぽこ級位者のぼくが、効率の悪い読書を繰り返してみずから試行錯誤したものを再構成し、自分なりに読書ガイドを書いてみようというのが今回の趣旨になります。
将棋のトレーニングは水泳やピアノの練習にとてもよく似ています。いきなりクロール泳ごうとかシューマン弾こうとかしてもムリなので、ビート板でバタ足できるようになるとか、こどものバイエル(教本)から運指の練習をするとか、地道に段階をふんで始めたほうが、けっきょくは近道になります。
とりあえずやってみて、「カンタンだ」と感じるステップはどんどん通り過ぎればよいわけです。
ということで、段階別の書籍の紹介をしながらトレーニングの組み立て方も提示できたらいいなと思います。
大雑把に知りたいかたは、この記事の目次と、棋書ロードマップの画像だけみていただければ、おおよそわかるようになっています。
独習のオトモに用意したいもの
ぴよ将棋
まずはこのアプリは絶対にDLしておいてほしいです。
本を読みながらぴよ将棋を使う
本を読むときに、駒を盤面に再現しながら読むとわかりやすくなります。その際にはぴよ将棋の「局面作成機能」を使ってみましょう。
本に出てくる局面と手順を、進めたり戻したりしながら確認できます。
以下は試しに北尾まどか『やさしくてよくわかる!はじめての将棋レッスン』に出てくる局面図を再現してみたものです。ここから本に出てくる手順を入力して進めたり、巻き戻して分岐を確認したりできます。
正直これがめちゃ便利なので、しばらく将棋盤は買わなくてもいいとすら思います。
実践してみたくなったらAIと対局もできる
ぴよ将棋さえあれば、今回オススメしているトレーニング手順をすべてまかなうことができます。読んで実践、のサイクルをまわすオトモになってもらいましょう。
ぶっちゃけていうと、8枚落ちくらいまでは本を買わなくてもぴよ将棋だけで練習できます。そういう雑な始め方については、またあらためてご紹介します。
オススメブックマップ
さてここからが本題です。オススメの本と読む順についてみていきましょう。
まずは全体をロードマップでご紹介します。
この記事ではいきなりハンデなし(平手)をやってみようとするのではなく、最小限の駒から順番に、駒落ちというハンデ戦をやってみて段階的にステップアップする手順をご紹介しています。「そんなんしゃらくせえや」というかたはいきなり飛ばしてやってみてもかまわないと思いますが、途中でつまづいたら、こちらを参考にすこし戻ってみてみるのもいいかもしれません。
最初の1冊:北尾まどか『やさしくてよくわかる!はじめての将棋レッスン』
最小限の要素から段階を踏んでステップアップ
まずはこちらからオススメします。
著者は『どうぶつしょうぎ』でも有名な北尾先生ですが、先生は「ねこまど将棋教室」を運営されているレッスンのスペシャリストでして、本書はそのノウハウがめちゃくちゃに凝縮されています。
いきなりすべての駒を動かすことを目指すのではなく、飛角の動きだけを覚え、まずその2枚で王さまを捕まえる感覚から練習することができます。
将棋というゲームで勝つには「玉は下段に落とせ」「玉は包むように寄せよ」と口を酸っぱくして言われます。飛角玉のたった3枚でその練習ができるんだぞ、ということから教えてもらえます。ハッキリ言ってものすごい。
そこから9枚落ちまで段階を踏み、棒銀戦法で平手(ハンデなし戦)を戦うところまでガイドしてくれます。
この本で紹介されているトレーニング法の大半は「ぴよ将棋」で実践できるので、やりながら読み進めてみてください。補足として「ぴよ将棋」内にある、「入門講座」を読むのもいいと思います。
各章の要所要所にクイズがちりばめられており、解いて定着を確認しながら読み進められるのも工夫を感じます。
日本将棋連盟のブログでもオススメされていまして、間違いのない1冊です。
次の1冊:羽生善治監修『羽生善治のみるみる強くなる将棋入門』
「将棋ってけっきょく何をしてるの?」がひととおり掴める
ぴよ将棋相手に8枚落ちをクリアできるかな、くらいまできたら、こちらを読んでみてください。将棋はなにをとっかかりに考えたらいいのか、を「5箇条」という形でまとめ、コンパクトに提示してくれます。
網羅性が高くコンパクトに濃い内容が詰まっているので、しばらくこれだけ読んでてもいいくらいだと思います。
棒銀、四間飛車といった代表的な戦法も紹介されているので、とりあえず真似して指すとけっこう指せます。
見出しを読むだけでも効果がある
各章の小見出しは格言の形で結論がひと言でまとめられています。折に触れて小見出しだけでもひととおり目を通すと「そういえばそうだったな」と発見があります。
このへんで将棋の序・中・終盤についても知っておく
この『将棋入門』は3部作になっており、このほか「序盤の指し方」と「終盤の指し方」があります。まあ読まなくてもいいとは思いますが、「序盤」のほうには「プロローグ:キホンのキ」というまとめが巻頭にあります。これは「将棋の序中終盤とは?それぞれ何を目標にすべき?」ということがまとめられており、参考になります。
遠山先生のワンコイン本でもコンパクトに学べます。あれはひととおり目を通して損のない本です。
「次の一手」問題集でおさらいしよう:
高橋和『はじめての将棋練習帳 STEP1 駒を取る』
高橋和『はじめての将棋練習帳 STEP2 駒を詰ます』
参考書を読んだら問題集。受験でもよくある流れですね。めんどうだったら上記2冊を読む前に、こっちからアタックするのもありです。つまずいたところから本に戻って読むという考えもあると思います。
こちらも著者の高橋先生は「将棋の森」という教室を運営されているレッスンのプロ中のプロです。3000人の初心者を指導してきただけあって、どこでつまづくかを知悉しています。そのノウハウを生かさない道理はありません。
「解いて定着させる」の初歩・定番といえば「1手詰」ですが、駒の利き(どこにその駒が動けるのか)が身体に染みていないと、難しいです、1手詰。ふつうに。今回は「最初からムリをしない」を基本方針にオススメしております。
まずは青いほうからやってみましょう。最初は死ぬほどカンタンなので、ばんばん解いて自信をつけましょう。カンタンすぎる?ご安心を。4章のあたりからグッと歯ごたえが出てきます。最後まで解いたら間違えたところをおさらいしてみましょう。
青いほうがひととおり解けたら、オレンジもやってみてください。サクサク解けると楽しいものです。
こちらも連盟のブログで紹介されています。
ここまで4冊を紹介しました。これぜんぶ消化するだけで、あるいは3ヶ月くらいかかるかもしれません。でもゆっくりやれば、意外と難しくないんだなと実感してもらえると思います。
読んでる途中で全体像が見えなくなり、「自分はいまなにを目標に、なんのためにこれ読んでるんだっけ?」と見失うときがあるかもしれません。そんなときは最初にご紹介した、遠山先生の『ゼロからはじめる 大人のための将棋入門』を読んでみてください。自分のトレーニングを大きな流れの中に位置づけられるようになると思います。
4冊おわるころには、そのへんのビギナーにはたいてい負けなくなっています。
次回は「中級位者になろう編」です。得意戦法をひとつ身につけて、攻めの考え方をインストールして、詰める力をつけていきましょう。