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ゼロから独習する将棋ブックガイド1:入門から初級へ上がろう編

将棋に入門するための良書は山ほど出版されています。

初段にあがるための勉強法も山ほど紹介されています。

「読んでよかった、ためになった棋書」を紹介するブログ記事も山ほどあり、たいていどれもよい記事です。

 

でもなぜか、「入門してから初級まで、初級から戦法をひとつ決めて身につけるくらい(5級くらい)まで、何をどういう順番で実践してみたらいいか」を紹介するものは、それほど多くありません。

そんななかでもいい本はあります。遠山先生の『ゼロからはじめる 大人のための将棋入門』なんかがそうです。なんとワンコイン。ちょっと(だいぶ)図版が小さいことが玉に瑕。

 

 

「とりあえずの入門がすんでから5級へ」なら、こちらもいい本です。

 

 

 しかし。「読む順」まで示したブックガイドとなるとぜんぜんない。まったくないんですね。

「入門」と「初段」のあいだ、「初級から級位のまんなかへ」が果てしなく長いのに、なにしたらいいのかぜんぜんわからない。

いやー、もっとあっていいと思うんですよ。

こどもなら繰り返し失敗しながら覚えていけば、気がついたら5級くらいは指せるようになっているでしょう。しかし大人がゼロからとなると、なるべく効率のいいやりかたをしたいものです。

 

ということで、へっぽこ級位者のぼくが、効率の悪い読書を繰り返してみずから試行錯誤したものを再構成し、自分なりに読書ガイドを書いてみようというのが今回の趣旨になります。

 

将棋のトレーニングは水泳やピアノの練習にとてもよく似ています。いきなりクロール泳ごうとかシューマン弾こうとかしてもムリなので、ビート板でバタ足できるようになるとか、こどものバイエル(教本)から運指の練習をするとか、地道に段階をふんで始めたほうが、けっきょくは近道になります。

とりあえずやってみて、「カンタンだ」と感じるステップはどんどん通り過ぎればよいわけです。

ということで、段階別の書籍の紹介をしながらトレーニングの組み立て方も提示できたらいいなと思います。

 

大雑把に知りたいかたは、この記事の目次と、棋書ロードマップの画像だけみていただければ、おおよそわかるようになっています。

 

 

 

独習のオトモに用意したいもの

ぴよ将棋

ぴよ将棋

ぴよ将棋

  • STUDIO-K Inc.
  • ゲーム
  • 無料

apps.apple.com

まずはこのアプリは絶対にDLしておいてほしいです。

本を読みながらぴよ将棋を使う

本を読むときに、駒を盤面に再現しながら読むとわかりやすくなります。その際にはぴよ将棋の「局面作成機能」を使ってみましょう。

 

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トップ画面の右下から「局面を作成する」を選択

 

本に出てくる局面と手順を、進めたり戻したりしながら確認できます。

以下は試しに北尾まどか『やさしくてよくわかる!はじめての将棋レッスン』に出てくる局面図を再現してみたものです。ここから本に出てくる手順を入力して進めたり、巻き戻して分岐を確認したりできます。

 

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右は左の図12番を再現してみたもの

 

正直これがめちゃ便利なので、しばらく将棋盤は買わなくてもいいとすら思います。

 

実践してみたくなったらAIと対局もできる

ぴよ将棋さえあれば、今回オススメしているトレーニング手順をすべてまかなうことができます。読んで実践、のサイクルをまわすオトモになってもらいましょう。

 

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「対局開始」→「手合」を選択して入門むけからやっていってみましょう

ぶっちゃけていうと、8枚落ちくらいまでは本を買わなくてもぴよ将棋だけで練習できます。そういう雑な始め方については、またあらためてご紹介します。

 

オススメブックマップ

さてここからが本題です。オススメの本と読む順についてみていきましょう。

まずは全体をロードマップでご紹介します。

 

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オススメ棋書ロードマップ

 

この記事ではいきなりハンデなし(平手)をやってみようとするのではなく、最小限の駒から順番に、駒落ちというハンデ戦をやってみて段階的にステップアップする手順をご紹介しています。「そんなんしゃらくせえや」というかたはいきなり飛ばしてやってみてもかまわないと思いますが、途中でつまづいたら、こちらを参考にすこし戻ってみてみるのもいいかもしれません。


最初の1冊:北尾まどか『やさしくてよくわかる!はじめての将棋レッスン』

 

やさしくてよくわかる!  はじめての将棋レッスン

やさしくてよくわかる!  はじめての将棋レッスン

  • 作者:北尾 まどか
  • 発売日: 2018/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

最小限の要素から段階を踏んでステップアップ

 まずはこちらからオススメします。

著者は『どうぶつしょうぎ』でも有名な北尾先生ですが、先生は「ねこまど将棋教室」を運営されているレッスンのスペシャリストでして、本書はそのノウハウがめちゃくちゃに凝縮されています。

いきなりすべての駒を動かすことを目指すのではなく、飛角の動きだけを覚え、まずその2枚で王さまを捕まえる感覚から練習することができます。

将棋というゲームで勝つには「玉は下段に落とせ」「玉は包むように寄せよ」と口を酸っぱくして言われます。飛角玉のたった3枚でその練習ができるんだぞ、ということから教えてもらえます。ハッキリ言ってものすごい。

そこから9枚落ちまで段階を踏み、棒銀戦法で平手(ハンデなし戦)を戦うところまでガイドしてくれます。

この本で紹介されているトレーニング法の大半は「ぴよ将棋」で実践できるので、やりながら読み進めてみてください。補足として「ぴよ将棋」内にある、「入門講座」を読むのもいいと思います。

各章の要所要所にクイズがちりばめられており、解いて定着を確認しながら読み進められるのも工夫を感じます。

日本将棋連盟のブログでもオススメされていまして、間違いのない1冊です。

 

 

次の1冊:羽生善治監修『羽生善治のみるみる強くなる将棋入門』

 

 

「将棋ってけっきょく何をしてるの?」がひととおり掴める

ぴよ将棋相手に8枚落ちをクリアできるかな、くらいまできたら、こちらを読んでみてください。将棋はなにをとっかかりに考えたらいいのか、を「5箇条」という形でまとめ、コンパクトに提示してくれます。

網羅性が高くコンパクトに濃い内容が詰まっているので、しばらくこれだけ読んでてもいいくらいだと思います。

棒銀四間飛車といった代表的な戦法も紹介されているので、とりあえず真似して指すとけっこう指せます。

見出しを読むだけでも効果がある

各章の小見出しは格言の形で結論がひと言でまとめられています。折に触れて小見出しだけでもひととおり目を通すと「そういえばそうだったな」と発見があります。

 

このへんで将棋の序・中・終盤についても知っておく 

この『将棋入門』は3部作になっており、このほか「序盤の指し方」と「終盤の指し方」があります。まあ読まなくてもいいとは思いますが、「序盤」のほうには「プロローグ:キホンのキ」というまとめが巻頭にあります。これは「将棋の序中終盤とは?それぞれ何を目標にすべき?」ということがまとめられており、参考になります。

遠山先生のワンコイン本でもコンパクトに学べます。あれはひととおり目を通して損のない本です。

 

 

 

次の一手」問題集でおさらいしよう:

高橋和『はじめての将棋練習帳 STEP1 駒を取る』
高橋和『はじめての将棋練習帳 STEP2 駒を詰ます』

 

はじめての将棋練習帳 STEP1 駒を取る

はじめての将棋練習帳 STEP1 駒を取る

  • 作者:高橋 和
  • 発売日: 2018/11/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

はじめての将棋練習帳 STEP2 駒を詰ます

はじめての将棋練習帳 STEP2 駒を詰ます

  • 作者:高橋 和
  • 発売日: 2018/11/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

参考書を読んだら問題集。受験でもよくある流れですね。めんどうだったら上記2冊を読む前に、こっちからアタックするのもありです。つまずいたところから本に戻って読むという考えもあると思います。

こちらも著者の高橋先生は「将棋の森」という教室を運営されているレッスンのプロ中のプロです。3000人の初心者を指導してきただけあって、どこでつまづくかを知悉しています。そのノウハウを生かさない道理はありません。

 

「解いて定着させる」の初歩・定番といえば「1手詰」ですが、駒の利き(どこにその駒が動けるのか)が身体に染みていないと、難しいです、1手詰。ふつうに。今回は「最初からムリをしない」を基本方針にオススメしております。

まずは青いほうからやってみましょう。最初は死ぬほどカンタンなので、ばんばん解いて自信をつけましょう。カンタンすぎる?ご安心を。4章のあたりからグッと歯ごたえが出てきます。最後まで解いたら間違えたところをおさらいしてみましょう。

青いほうがひととおり解けたら、オレンジもやってみてください。サクサク解けると楽しいものです。

こちらも連盟のブログで紹介されています。

 

 

ここまで4冊を紹介しました。これぜんぶ消化するだけで、あるいは3ヶ月くらいかかるかもしれません。でもゆっくりやれば、意外と難しくないんだなと実感してもらえると思います。

読んでる途中で全体像が見えなくなり、「自分はいまなにを目標に、なんのためにこれ読んでるんだっけ?」と見失うときがあるかもしれません。そんなときは最初にご紹介した、遠山先生の『ゼロからはじめる 大人のための将棋入門』を読んでみてください。自分のトレーニングを大きな流れの中に位置づけられるようになると思います。

4冊おわるころには、そのへんのビギナーにはたいてい負けなくなっています。

 

次回は「中級位者になろう編」です。得意戦法をひとつ身につけて、攻めの考え方をインストールして、詰める力をつけていきましょう。